企業法務コラム

2026.10.27

非上場株式の買取価格でもめたらどうなるか

非上場株式の買取価格でもめたらどうなるか

株主から株式譲渡承認請求を受け、会社として「承認しない」と判断した。これで話は終わり、とはなりません。

承認しないと決めた瞬間、会社は買う側の立場に立たされます。そして、そこから始まるのは価格の交渉です。株主はできるだけ高く、会社はできるだけ安く。利害が正面から対立するため、交渉が難航することは珍しくありません。

本記事では、非上場株式の買取価格がどのように決まるのか、会社側が何を想定しておくべきかを整理します。

1. 不承認と決めた時点で、会社は買主になる

株式譲渡承認請求は、多くの場合「買取先指定請求」とセットで届きます。「譲渡を承認しないのであれば、適当な人に買い取らせてほしい」という請求です。

制度の趣旨を考えれば、これは筋が通っています。譲渡制限の目的は、会社にとって都合の悪い人物が株主になることを防ぐことであって、株主が出資金を回収する道まで塞ぐことではありません。そして、会社にとって「都合の良い人」を決められるのは会社だけです。

したがって会社は、次のどちらかを選ぶことになります。

  • 会社自身が買い取る
  • 買い取る人(指定買取人)を指定する

そして、その旨を株主に通知します。この通知がなされた時点で、株式を譲渡する契約が締結されたものとして扱われます。

ここが会社側にとって重要な点です。不承認は「断る」ことではなく、「自分が買う」と表明することとほぼ同義になります。

2. 価格は当事者の交渉で決まる

買主が会社になるか指定買取人になるかは決まりましたが、価格はまだ決まっていません。ここから株主との交渉になります。

非上場株式には市場価格がありません。上場株式のように「今日の終値」で決着させることができないため、何を基準に評価するかで金額が大きく変わります。

株主側は「会社の資産価値からすればこの金額のはずだ」と主張し、会社側は「配当もない少数株式にそこまでの価値はない」と主張する。どちらの言い分にもそれなりの理屈が立つため、協議が平行線をたどることになります。

3. 合意できなければ、裁判所が価格を決める

協議が調わない場合、裁判所に売買価格の決定を申し立てる手続きが用意されています。

会社側が理解しておくべきなのは、次の点です。

「買わない」という選択肢はもうない
価格が決まらないから白紙に戻す、ということはできません。手続きが進めば、価格は必ず決定されます。

期限がある

この申立てには期間制限が定められています。〔※期間の具体的な日数と起算点は、髙瀬弁護士の確認後に記載〕

決まった価格には従うしかない

裁判所が算定した金額が、会社の想定を大きく上回る可能性があります。

4. 会社側が抱えるリスク

価格決定手続きまで進んだ場合、会社には次のような負担が生じます。

想定を超える金額になりうる

純資産をベースに評価されれば、会社が「妥当」と考えていた金額とかけ離れた結果になることがあります。長年にわたり内部留保を厚くしてきた会社ほど、この差は大きくなります。

支出のタイミングを選べない

事業投資や運転資金の計画とは無関係に、買取代金を用意しなければなりません。

財源の制約を受ける場合がある

会社自身が自己株式として買い取る場合には、分配可能額による制約を受けます。手元資金があるかどうかとは別の問題として、そもそも買い取れるのかを確認しておく必要があります。

時間と労力がかかる

株価の評価をめぐる主張立証が必要になり、経営者と管理部門の時間が相当量割かれます。

5. だからこそ、初期対応で差がつく

顧問弁護士契約の主なメリット

ここまで見てきたとおり、価格決定手続きまで進むと、会社は金額もタイミングもコントロールできなくなります。

逆に言えば、会社がコントロールできるのは、承認するかしないかを判断する段階までです。

不承認を決める前に、価格の見通しを持っておく

「この株主が出ていくとして、いくらになりそうか」の当たりをつけずに不承認を決めるのは、金額のわからない買い物を決めるのと同じです。

そもそも承認するという選択肢も検討する

譲渡先が事業にとって支障のない相手であれば、承認してしまう方が会社にとって合理的な場合もあります。制度上、承認するかしないかは会社の自由です。

交渉で着地させる余地を残す

裁判所の手続きに入る前であれば、支払時期の分割など、金額以外の条件を含めた解決ができます。

株主の背景を把握する

譲渡承認請求の背景には、相続による株式の分散、退職、経営方針の対立など、より大きな問題が潜んでいることがほとんどです。目の前の1件を処理するだけでは、同じことが繰り返されます。


髙瀬総合法律事務所は、会社支配権をめぐる紛争を解決した豊富な実績と、会社法に精通した弁護士を擁しています。株主から株式の買取を求められている、買取価格の交渉が進まないといった段階でも、お早めにご相談ください。

髙瀬総合法律事務所は、会社支配権をめぐる紛争を解決した豊富な実績と、会社法に精通した弁護士を擁しています。株主から株式の買取を求められている、買取価格の交渉が進まないといった段階でも、お早めにご相談ください。

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