2026.08.26
【調達直後スタートアップ向け】スタートアップの業務委託契約で揉める条項TOP5

シリーズA後に弁護士が真っ先に指摘するトラブルポイント
シリーズAで資金調達を終えたスタートアップは、開発・デザイン・マーケティングなど、あらゆる領域で外部パートナーとの協業が一気に増えます。スピード重視で動くスタートアップにとって、業務委託は事業拡大の重要な手段です。
しかし、このフェーズで頻繁に起きるのが「業務委託契約をめぐるトラブル」です。
創業期に使っていたテンプレートのまま、あるいは相手方から提示された契約書をほぼそのまま締結してしまい、後から「こんな条項が入っていたのか」と気づくケースが後を絶ちません。
本記事では、スタートアップの業務委託契約で実際に揉めやすい条項をTOP5に絞って整理します。調達後の法務整備の一環として、ぜひ確認してください。
なぜ業務委託契約はトラブルになりやすいのか?
業務委託契約は、雇用契約と異なり「当事者間で自由に設計できる」という特性があります。これは柔軟性がある反面、条項が曖昧なまま締結されやすいという落とし穴でもあります。
特にスタートアップでは、
- 相手方(フリーランス・制作会社)から提示された契約書をそのまま使う
- 急いでいるので細かい条項を後回しにする
- 法務担当者がおらず、経営者や現場担当者が判断する
という状況が重なりやすく、結果として「揉めるべくして揉める」契約書になってしまっているケースが多いのです。
揉める条項TOP5

第1位|成果物の著作権・知的財産の帰属条項
業務委託契約で最も多いトラブルの原因がこれです。
「お金を払って作ってもらったのだから、当然うちの権利だ」と思っている会社が非常に多いのですが、著作権法上はそうなりません。契約書に著作権の譲渡条項がなければ、成果物の著作権は制作した委託先側に残ります。
具体的にトラブルになるのは、
- 開発してもらったシステム・アプリのソースコード
- 外注したサイトデザインやロゴ
- ライターに依頼した記事・コピー
- 動画・写真などのクリエイティブ
といった場面です。委託先との関係が悪化したとき、「著作権はこちらにあるので使用を止めてほしい」と言われるリスクが現実に存在します。
対策
契約書に「成果物にかかる著作権(著作者人格権の不行使を含む)は、対価の支払いをもって委託者に帰属する」旨を明記することが必須です。
第2位|中途解約条項(解約予告期間・違約金)
業務委託は、プロジェクトの途中で「やっぱり方向性が合わない」「別の会社に切り替えたい」となることがあります。このときに問題になるのが中途解約条項です。
よくある落とし穴は、
- 解約予告期間が長すぎる(3ヶ月・6ヶ月など)
- 違約金条項が高額すぎる
- 解約事由が限定されすぎていて実質的に解約できない
逆に、委託先側から突然解約されるケースも問題です。プロジェクト途中でエンジニアやデザイナーに離脱されると、事業が大きくダメージを受けます。
スタートアップは事業のピボットや方針転換が多いフェーズだからこそ、解約条項の設計が経営の自由度に直結します。
対策
合理的な解約予告期間(2〜4週間程度)、中途解約時の精算ルール、委託先からの解約制限条項を整備しておくことが重要です。
第3位|再委託(外注)の可否条項
委託先が業務の一部をさらに別の会社・個人に外注する「再委託」。これを明確に規定していないケースが非常に多く、気づいたら全く知らない第三者が関与していたというトラブルに発展することがあります。
問題になるのは、
- 機密情報が意図しない第三者に渡る
- 再委託先の品質が担保されない
- 誰が責任を負うのかが不明確になる
といった場面です。特に情報セキュリティやコンプライアンスへの要求が高まる調達後フェーズでは、再委託の管理は避けて通れません。
対策
「再委託には事前の書面による承認を要する」と明記し、再委託先に対しても同等の秘密保持義務を課す条項を入れることが基本です。
第4位|秘密保持・情報管理条項
業務委託では、委託先に自社の未公開情報を開示する場面が必ず生じます。開発ロードマップ、顧客データ、資金調達状況、内部の数値情報など、スタートアップが扱う情報は競争力の源泉そのものです。
秘密保持条項が弱いと、
- 委託終了後に情報が流用される
- 競合他社に情報が渡る
- 秘密情報の範囲が不明確で、侵害を立証できない
という事態が起きます。また、「秘密保持条項はあるがNDAを別途締結していない」というケースでは、実効性が乏しいこともあります。
対策
秘密情報の定義を広めに設定し、契約終了後の義務継続期間(少なくとも2〜3年)を明記します。返還・廃棄義務もセットで規定しておきましょう。
第5位|損害賠償の範囲・上限条項
最後に、見落とされがちながら実際の紛争で最も争いになるのが損害賠償条項です。
委託先のミスによってシステムが止まった、納品物に重大な欠陥があったというケースで、「どこまで賠償してもらえるか」が問題になります。
スタートアップが注意すべきは、
- 賠償上限が「委託料の○ヶ月分」に限定されている(実損害をカバーできない)
- 間接損害・逸失利益が除外されている
- 逆に、自社が委託先に対して過大な賠償責任を負う条項になっている
という点です。BtoB取引が増えるほど、損害の規模も大きくなります。
対策
賠償範囲・上限の設定は双方向で確認し、自社にとって不合理な制限がないかを弁護士にチェックしてもらうことが重要です。
業務委託契約を整備するベストタイミング
これらの条項の問題は、契約締結前に整備しておけば防げるものです。
しかし現実には、「とりあえず始めてしまってから問題が起きる」ケースがほとんどです。調達直後のこのタイミングこそ、業務委託契約書のひな形を整備し、案件ごとに適切な修正を加える体制を作るベストタイミングといえます。
調達後の法務整備については、以下の記事もあわせてご参照ください。
- 資金調達後にまず見直すべき契約書5選
- シリーズA調達後にやるべき法務整備チェックリスト
- スタートアップのための株主総会・取締役会運営ガイド
- 調達後に顧問弁護士を見直すべきタイミングとは?
- スタートアップの雇用契約書で必ず入れるべき条項
まとめ。業務委託契約のリスクは「締結前」に潰す

スタートアップの業務委託契約で揉めやすい条項TOP5は以下です。
- 成果物の著作権・知的財産の帰属
- 中途解約条項(解約予告期間・違約金)
- 再委託の可否
- 秘密保持・情報管理
- 損害賠償の範囲・上限
これらはいずれも、事前に弁護士と整備しておけば防げるトラブルです。調達後のスピード感を維持しながら、外部パートナーとの契約リスクをコントロールすることが、次の成長フェーズを安定させる基盤になります。
業務委託契約の整備は弁護士にご相談ください

髙瀬総合法律事務所は、スタートアップを含む数百件規模の顧問対応実績を通じて、成長企業特有のスピード感と実務事情を熟知しています。
業務委託契約書のひな形整備・個別案件のレビューから、調達後の法務体制構築まで、迅速かつ的確にサポートします。
調達後の顧問体制に少しでも不安があれば、早めにご相談ください。






