企業法務コラム

2026.10.13

株主から株式譲渡承認請求が届いたときに会社がすべきこと

株主から株式譲渡承認請求が届いたときに会社がすべきこと

ある日、株主から一通の内容証明郵便が届きます。「保有する株式を第三者に譲渡したいので承認してほしい」という内容です。

社内で対応を検討しているうちに数週間が経ってしまった。

これが最も危険なパターンです。会社法上、一定期間内に回答しなければ、会社は譲渡を承認したものとみなされます。誰に株主になってほしくなかったのかにかかわらず、です。

本記事では、非上場企業の経営者・管理部門の方に向けて、譲渡承認請求を受けた会社側が何を判断し、どの期限を守らなければならないかを整理します。

1. そもそも譲渡制限は何のためにあるのか

多くの中小企業は、定款で株式の譲渡を制限しています。株式を譲渡するには会社の承認が必要、という定めです。

この制度の目的は明確で、会社にとって意に沿わない人物が株主になることを防ぐことにあります。同族経営の会社を想像するとわかりやすいでしょう。株式が外部に流出すれば、株主総会の運営や重要な意思決定に第三者の意向が入り込むことになります。

上場企業は誰でも株主になれるため、株式譲渡は制限されていません。譲渡制限は、非公開会社に固有の仕組みです。

譲渡制限には3つの類型があります。

  • 定款で全ての株式に譲渡制限を設ける(最も一般的)
  • 株式ごとに譲渡制限を設ける(種類株式)
  • 契約で譲渡制限を設ける

3つ目は登記されないため外部からはわかりませんが、代表例が従業員持株制度です。「従業員が退職するときには会社が株式を買い取る」といった形で譲渡を制限し、株主が社外に流出することを防ぎます。あわせて買取価格や条件に制限を設けることで、従業員の定着やエンゲージメント向上につなげる狙いもあります。

重要なのは、この制限をかけているのは会社自身だということです。制限をかけている以上、株主から承認を求められたときに応答する責任も会社にあります。

2. 譲渡承認請求が届いたら何が起きるのか

株主が株式を譲渡したいと考えたとき、会社に対して承認を求める請求を行います。これを譲渡承認請求といいます。

この請求には、譲渡の相手方が明示されます。制度の目的が「会社にとって都合の悪い人を排除する」ことにある以上、誰に譲渡するのかがわからなければ会社は判断できないからです。

請求を受けた会社は、承認するかしないかを決定します。決定する機関は会社の機関設計によって異なります。

  • 取締役会設置会社:取締役会
  • それ以外の会社:株主総会

なお、この承認機関は定款で別に定めることもできます。自社がどうなっているか、まず定款を確認してください。

そして、ここが会社側にとって重要な点ですが、承認するかしないかは会社の自由です。理由を説明する義務もありません。そうでなければ「意に沿わない株主を排除する」という制度の目的が果たせないからです。

3. 2週間を過ぎると、承認したことになる

承認・不承認を決定したら、請求した株主に通知します。

問題は、この通知が遅れた場合です。会社法は、株主が請求した日から2週間以内に通知がなされない場合、株式譲渡は承認されたものとみなすと定めています。

「みなす」という効果は非常に強力です。実際には承認する気がまったくなかったとしても、後からそれを争うことは極めて困難になります。

つまり、社内で検討している間に2週間が過ぎれば、望まない相手が正式に株主になるということです。

だからこそ会社側には、次の2つが必要になります。

期限を管理する体制

請求を受け取った人と、承認機関を招集する人と、通知を発送する人が別々になっていると、期限は容易に流れます。誰が起算日を管理するのかを決めておく必要があります。

起算日の証拠

「いつ請求を受けたか」が争点になり得ます。株主側から配達証明付内容証明郵便で請求が来ている場合、起算日は明確です。逆に口頭やメールで曖昧に来た場合は、受領日を記録に残しておくべきです。

4. 承認しないと決めた場合、そこで終わりではない

譲渡を承認しない、と決定したとします。これで株主は株式を手放せなくなり、現状維持になる——とはなりません。

会社法は、承認しない場合について次のように定めています。譲渡承認請求とあわせて、株主は買取先指定請求を行うことができます。「譲渡を承認しないのであれば、適当な人に買い取らせてほしい」という請求です。

制度の趣旨から考えれば筋が通っています。会社が排除したいのは「都合の悪い人」であって、株主が出資金を回収する道まで塞ぐ制度ではありません。そして「都合の良い人」を決められるのは会社だけです。

したがって会社は、自ら買い取るか、買い取る人(指定買取人)を指定することになります。この通知がなされると、株式を譲渡する契約が締結されたものとして扱われます。

ここから先は、価格の問題に移ります。株主は高く売りたい、会社は安く買いたい。利害が正面から対立するため、交渉が難航することも珍しくありません。

買取価格をめぐる交渉と、合意できなかった場合の手続きについては、別記事で詳しく解説します。

5. 会社が押さえておくべき実務上のポイント

最後に、譲渡承認請求への対応で会社側が確認すべきことを整理します。

定款を確認する

承認機関がどこか、そもそも譲渡制限がどう定められているかを、請求が来てから調べるのでは遅すぎます。

期限管理の担当を決めておく

2週間という期間は、取締役会や株主総会を招集して決議し、通知を発送するまでを含みます。決して余裕のある期間ではありません。

承認しない場合の出口を先に考える

不承認と決めれば、会社または指定買取人が買い取ることになります。買取資金をどう用意するか、誰を指定買取人とするかを、不承認を決める前に検討しておく必要があります。

早い段階で弁護士に相談する

譲渡承認請求は、単発の手続きに見えて、株主間の対立や事業承継の問題が背景にあることがほとんどです。請求が届いた時点で、その背景まで含めて見立てを持っておくことが、後の紛争を避けることにつながります。


当事務所は、会社支配権をめぐる紛争を解決した豊富な実績と、会社法に精通した弁護士を擁しています。株主から譲渡承認請求を受けた、あるいは今後受ける可能性があるという段階でも、お早めにご相談ください。

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