従業員が共謀して使込んだ横領金を取り戻した事例
- 2024.10.22
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Case type
-
Lowyer
history of the problem 問題の経緯
相談時の 状況
- 業種
- 製造業
- 従業員数
- 30名
- 着服した人
- 社内経理担当、取締役
- 相談者
- 代表者
会社の業績は好調でしたが、決算書で使途がない項目の費用が膨らみ、会社へ報告している金額と顧客に請求している金額が違うことから不審に思った経営者が社内経理に問い詰めたところこの経理担当者の着服が発覚しました。
経理が使い込んだお金は、顧客に水増し請求して差額分を着服することで得ていたことが分かりました。取締役が経理にキックバック(見返り)を与えることを条件に指示してお金を引き出させ、共謀していたことも明らかとなりました。
会社は、この不正行為により大きな損失を被ったため、弁護士に相談し、資金の回収を目指しました。
history of the problem クライアントの争点・希望点
争点
誰が不正行為を行ったのかを明確にし、会社から不正に引き出された資金をできるだけ多く回収し、法的措置を講じること。
Consequences of this issue. この問題の結果
経理に請求し、最終的に取締役を民事訴訟
着服したお金を引き出したのは経理であったため、着服した金額を請求したところ、取締役に指示されたとのことだったため、取締役を訴訟し、裁判を経て着服金を一部回収することができました。
history of the problem 弁護士ポイント解説
誰が着服金を引き出したか
横領の問題は、誰が銀行で着服金を引き出したか、が一つの大きな争点となります。通常横領の場合は引き出した人物に横領したお金を請求するようになります。そのため、通帳は「誰が引き出した」という記録がないために、会社の銀行を引き出すことのできる人物が2人以上いる場合は、誰が着服金を出したのか分からず問題が複雑化します。
今回の場合は会社の預金を引き出すのは概ね経理担当だった経理に請求しました。
最終的に民事訴訟を優先
経理に請求したところ、取締役がお金を私的流用するために引き出させていたことが分かったため、取締役に対し警察に刑事告訴する選択肢も検討されましたが、資金回収を優先するために民事訴訟が行われました。その理由として以下のように2つの理由があります。
警察が動かないケースがある
警察に刑事告訴をしても、特に会社のお金を使い込んだ場合、すぐに捜査が進まないことがあります。警察は「まず認知してください」と指示することが多く、即時に動いてくれるわけではないため、刑事訴訟に頼るだけでは迅速な解決が期待できません。
刑事告訴は強力な圧力になるが資金回収は難しい
刑事告訴を行うと、相手方に逮捕や拘留といった強力な法的圧力がかかります。これにより、相手が刑の軽減や保釈を求め、示談や被害弁償に応じる可能性が高まります。特に、逮捕や拘留を避けたい相手にとって、刑事告訴はプレッシャーとなり、返済の動機づけとして有効です。
その一方で刑事告訴の目的は、罰則を課すことが主であり、資金回収は二次的な効果に留まります。
資金回収には直接的に結びつきにくいため、資金を取り戻すためには、まず民事訴訟を通じて示談や弁済を進めることが一般的です。
着服(横領)を防ぐ会社の体制を
今回の例もそうですが往々にして業績が好調な企業に横領事件が多い傾向にあると感じました。
業績が良い会社では、資金の余裕があるため、細かい支出や資金管理に対して気が緩むことがあります。この結果、従業員や幹部による不正な資金の引き出しが目立たず、長期間発覚しないことが多いです
また、経理や会計を一人だけに任せることによって着服の実態のブラックボックス化が進み、気づけば使途不明金が膨らんでしまったというケースも相談として寄せられます。
ガバナンス(企業統治)の弱い会社では、意思決定プロセスや資金の使途に対する透明性が低く、資金が適切に管理されていない場合があります。古い体制の会社の場合では、取締役会や監査役が十分に機能していないため、会社のお金を自分のお財布代わりにしてしまい、着服し易いことも今回の件でも見受けられました。
着服の疑いを感じたら、まずは弁護士に相談を!
会社の資金が不自然に減っている、経理の報告に不明瞭な点がある、または従業員が不正な行為をしているかもしれないと感じたら、すぐに専門家に相談することが重要です。着服や不正行為は、早期に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。
1. 初期対応が肝心
着服の疑いがある場合、初動が非常に重要です。弁護士に相談することで、法的に有効な証拠を確実に収集し、整理することができます。特に、証拠がまだ不十分な段階では、警察に通報する前に弁護士と共に証拠を固めることが重要です。証拠が不十分なまま警察に通報すると、捜査が進まない場合があります。証拠を集めるためにも、適切な方法で状況を確認する必要があります。適切な手続きを踏まないと、証拠を隠されたり、問題がさらに悪化する可能性があります。
2. 法的対応を進めるために弁護士に相談
着服や不正行為の発覚時には、法律の専門家である弁護士に早急に相談することで、適切な対応策を講じることができます。弁護士は、証拠の収集、法的手続きの準備、不正行為者に対する法的責任の追及など、あらゆる角度からサポートしてくれます。
3. 今後の対策も弁護士と一緒に
弁護士は、単に問題を解決するだけでなく、今後同じようなことが起きないようにするためのアドバイスも行います。社内のガバナンスや監査体制の強化、契約や規定の見直しなど、予防策をしっかりと立てることができます。
この事件を担当した弁護士
高瀬 芳明代表弁護士
Yoshiaki Takase
経営者目線で白か黒ではなく「許容範囲内でのリスク承知でリターンを取れるような最適な課題解決策」のご提示を心がけています。