会社役員が独立する際、顧客や他従業員の引き抜きを防いだ事例
- 2024.10.15
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Case type
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Lowyer
history of the problem 問題の経緯
会社の重要な事業の一部を担当していた会社役員が、独立を決意しました。
この役員は会社の3事業のうち1事業を中心的に担っていました。その為、この役員が退職した場合は顧客や他の従業員を引き抜いて独立する可能性が高く、これにより会社の事業に大きな影響を及ぼすことが懸念されました。
依頼者である代表者から、この役員の独立をスムーズに進めつつ、会社の利益を守るための相談を受けました。
history of the problem クライアントの争点・希望点
希望点
独立する役員が顧客や他の従業員を引き連れて会社を退職することをどう防ぐか。また、会社の知的財産を役員が独立した際に流用されてしまう可能性が高く会社の利益にも関わるため喫緊の課題だった。会社の顧客や他の従業員を守り、事業の継続性を確保すること。
Consequences of this issue. この問題の結果
法的な合意書の作成
独立する従業員に対して、顧客や他の従業員の引き抜きを防ぐための競業避止義務を含む合意書を作成をしました。この合意書には、会社の知的財産権や製造プロセスに関する取り決めも含めました。
退職前に合意書を取り交わすことで、後から法的トラブルになるリスクを軽減しました。
合意書完成まで退職待ってもらうことに了解を得た
当該合意書は一般的な合意書ではないため、膨大なボリュームとなったため、完成するまで退職を待ってもらわなければなりませんでした。退職までつなぎ留めておくため、この役員の方へ弁護士から助言も行いました。
独立希望の役員従業員は円満退職
最終的に弊所で作成した合意書に同意してもらうことができ独立希望の役員の方は円満退社することが叶いました。会社側の利益を守ることができました。
history of the problem 弁護士ポイント解説
競業避止義務契約
競業避止義務契約(きょうぎょうひしぎむけいやく)とは、雇用契約や取引契約において、従業員や取引先が特定の業務に従事することを制限する契約です。
具体的には、退職後や契約終了後、一定期間内に同業他社に就職したり、競合するビジネスを立ち上げたりすることを禁止する内容が盛り込まれます。禁止内容はその企業によって様々となります。
契約を破った場合には法的に賠償を支払わせるといった強制力があります。
一方で、競業避止義務契約には有効性が必要になります。職業選択の自由を侵害し得ること等からどんな立場の従業員でも競業避止義務契約が有効になるとは言えません。さらにその競業避止義務契約内容によって有効であるかどうかはケースバイケースで変わってきます。
今回のケースでは役員である従業員が退職であることから、幹部クラスであれば企業の機密情報や、会社の事業を中心的に担っていることが客観的に考えられるため有効性がありました。
また有効性を確保ため競業避止義務による判例を確認し、合意書作成にあたって妥当なラインを探りました。
合意書作成で退職後のルールを明確化
今回作成した競業避止義務を含む合意書では3年間は同じ業務はしないことを合意書で取り決めた他、当該役員が独立後も会社の設備やノウハウ、マニュアル、製造プロセスといった知的財産を借りる、または買い取る場合の清算も明文化しました。競業避止義務契約には相応の有効性が必要となります。有効性が疑わしいままでは合意をとったとしても後々争った時に不利になりえます。
判例を紐解くと競業避止義務を巡って争われていますが各業種や規模などの内容によって判断が分かれてしまいます。
私たち弁護士は競業避止義務契約について、会社の利益を守る内容に徹することはもちろんのこと、その有効性についてリサーチを重ね、有効性を確実なものとするための合意書作成が可能です。
この事件を担当した弁護士
高瀬 芳明代表弁護士
Yoshiaki Takase
経営者目線で白か黒ではなく「許容範囲内でのリスク承知でリターンを取れるような最適な課題解決策」のご提示を心がけています。