2025.07.15
親会社からの返品で損害を負ったら? ― 下請法と判例・公取委の対応から弁護士が解説

「約束どおり納品したのに、大量返品された」
「今は必要なくなったと一方的に返品された」
「返品のルールが曖昧で振り回されている」――
そんな経験をした経営者の方は多いのではないでしょうか。
こうした一方的な返品は、下請法で禁止されており、損害賠償の対象となる可能性があるのです。
下請法における“不当な返品”とは?
下請法第4条1項4号では、「下請事業者に責めがないのに、納品物を返品させる行為」を禁止しています。
たとえ下請け側が同意していても、後から不都合があったとして返品するのはNG。取引慣行に沿った品質検査を行わず、納品後に返品を申し入れるのも禁止に該当します
重要判例・経営者が知っておきたい事例
セイコーマート事件(札幌高判平成31年3月7日)
米卸売業者Xが、PB商品を一方的に返品されたとして請求を行ったところ、札幌高裁は「返品合意は信義則・独禁法に反し無効」と判断。公取委も返品相当額の指導を出しています
参考記事:下級裁裁所 裁判例速報
サンリオ・カルディなど大手事例
- サンリオは納品後6か月を過ぎての返品で公取委から勧告を受けました 。
参考記事:株式会社サンリオに対する勧告について - 公正取引委員会 - キャメル珈琲(カルディ)は、下請事業者から商品を受領した後に品質検査を行わないまま、瑕疵があることを理由に、2021年5月から2022年7月にかけて、下請事業者に計305万3,210円相当の商品を引き取らせていたとして、公正取引委員会から下請法違反に基づく勧告を受けました。さらに、この返品に伴う人件費や保管費など約313万円を下請事業者に負担させていた点も、違反行為として指摘されました。
参考記事:株式会社キャメル珈琲に対する勧告について - 公正取引委員会
リーガル社の事例
品質検査をしないまま1,147万円もの返品がなされ、これも公取委からの勧告対象となりました。
参考記事:株式会社リーガル者に対する勧告について - 公正取引委員会
返品にどう対応すればいい?弁護士は対応する?

親会社との関係があるからこそ、「強く言い出しにくい」「波風を立てたくない」と感じてしまうのは自然なことです。
しかし、損害が発生している以上、感情的にならずに、冷静に“証拠”と“法的根拠”を整理することが大切です。
弁護士に相談した場合、対応は次のように進んでいきます。
1. 証拠の整理と状況の確認
- 契約書(返品条件や納品義務の有無)
- 納品書・返品伝票・検査記録
- メールやチャットなどのやりとり
これらをもとに、「下請事業者に責任がないにもかかわらず返品された」ことを客観的に示す準備をします。
2. 法的整理と見通しの検討
- 債務不履行や不法行為として損害賠償請求が可能か?
- 下請法に違反する可能性があるか?
- 公正取引委員会への相談や情報提供も視野に入れるべきか?
3. 実際のアクション:交渉から法的措置まで
- まずは書面による通知や交渉で解決を試みます
- 応じてもらえない場合、損害賠償請求や取引条件の見直し要求を法的に行うこともあります
- 公取委への情報提供や是正申し入れも、交渉の一手段です
このようにして、「泣き寝入りせず、関係を壊さずに適正な主張を通す」道筋を整えることができます。
まとめ|取引の“違和感”には法的裏付けがある

親会社や大手取引先からの「それが普通」という返品でも、下請法の観点では違法になり得ます。
実際に公取委や裁判所で是正や損害賠償が認められた事例もあるため、「これは不当では?」と感じたら、早めに弁護士に相談して証拠を整えることが重要です。
不当な返品にお悩みの方は、まずは契約内容や証拠を整理したうえで、今後どう対応すべきかを契約書や契約書トラブル、高度な契約について経験豊富な弁護士がご一緒に検討いたします。お気軽にご相談ください。
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