2025.09.03
親事業者の支払いが突然止まった!個人事業主が今日からできる対処法と、弁護士を使うメリット

「いつもの入金日なのに振り込まれていない」
「問い合わせても曖昧な返答しか来ない、無視される」
「支払い遅延が多いなと思ったらついに支払われなくなった」
個人事業主にとって、支払いの停止は資金繰りに直結する重大事です。
本コラムでは、今日から実行できる実務的な手順と、弁護士を活用する意味を、現場目線で整理します。
資金繰りに直結する深刻な出来事です。まずは、いま取れる具体的な一手と、法律が守ってくれる範囲を一緒に確認していきましょう。
まず知っておきたい法律

原則として契約違反(債務不履行)です
期日までに報酬が支払われない場合、民法上は債務不履行に当たり、履行(支払い)の請求や遅延損害金、損害賠償等を求めることができます。つまり、払ってもらえないのは、あなたが悪いからではなく、法令違反であることが多いのです。
下請法の保護対象なら法律違反に該当します
物品・役務の受領後60日以内に定めた期日までに支払わない行為は禁止行為(支払遅延)です。あなたの取引が下請法の対象であれば、未払いは法令違反として是正の対象になります。
フリーランス新法の対象か確認する ⇒
フリーランスではない事業主。下請法の対象か確認する ⇒
フリーランス新法でも保護が広がりました。
(フリーランス・事業者間取引適正化等法)
2024年11月1日施行。発注事業者には取引条件の明示義務が課され、報酬の減額や受領拒否の禁止などが定められています。個人で受託する取引の多くが射程に入り、「払わない」「受け取らない」といった不当な扱いは違反となり得ます。
どの法律が適用されるかは、業務内容・契約形態・相手方の要件で変わります。迷ったら、下の手順に沿って記録を整えつつ、専門家に早めに相談しましょう。
やっていませんか?
支払われない時にとってしまいがちなNG行動

- 「電話で何度も催促」だけで証拠が残っていない
- 支払期日を書面で切らない(「近く払う」と空約束が続く)
- 取引の性質に合う法律の当てはめをしないまま感情的に交渉
- 時間だけが経ち、法的手続の着手が遅れる
- 「成果物は未完成だ」と相手に言われ、納品・検収済みでも請求を控えてしまう
⇒成果物の引渡しや検収が終わっている場合は、原則として相手側の不履行(債務不履行)です。相手の一方的な「未完成」主張に過剰に引きずられて、正当な請求をあきらめることは避けましょう。
支払いが止まると、法律的にどう整理すべきかよりも、「どうしよう…」という焦りや、「自分が悪かったのかも」という落ち込みが先に来てしまうことは、誰にでもあります。
その結果、上記のような行動をとってしまい、回収のチャンスを狭めてしまうことも少なくありません。
だからこそ、一度深呼吸をして、落ち着いて回収のための正しい手順や法律の力を知ることが大切です。
法的に請求できる根拠を理解し、証拠を整理して行動に移せば、状況は必ず前に進みます。
今日からできる対処手順

「強く言いづらい」「関係を壊したくない」というお気持ちは当然です。だからあなたが悪者になることはありません。静かな強さで進めていきましょう。
1. 証拠の一本化
契約書・発注書・納品/検収記録・請求書・入金履歴・メール/チャット/電話メモを1フォルダに集約。
未払いの金額・対象業務・支払期日・遅延日数を表にして見える化。
2. 期限を切った一次催告を送付
手紙、メールなど証拠が残る形で〇月〇日までの入金、分割案があるなら提示をして催告します。
例文:一次催告(メール/書面・コピペ可)
件名:未払代金のご確認(請求書No.〇〇)
〇〇株式会社 〇〇様
平素よりお世話になっております。下記の未払分につき、◯/◯(◯)までにお振込みをお願い致します。
【対象】請求書No.〇〇/金額〇〇円/対象業務:△△/納品日:◯/◯
貴社のご事情がある場合は、支払予定日または分割案をご提示ください。
取引の適正化の観点から、関係法令(例:下請法・フリーランス法等)を踏まえ、迅速な対応をお願い致します。ご連絡がない場合は、内容証明での最終催告等に移行します。
3. 最終催告(内容証明)
- 反応なし/約束反故なら内容証明郵便で最終通告。オンラインのe内容証明なら24時間受付で手早くできます。 利率の定めがない場合、法定利率は年3%(2025.8月現在)。遅延損害金も明記しておくと良いです。
- ● e内容証明郵便について詳しく見る ⇒
例文:最終催告(内容証明)
最終催告書
下記債権(請求書No.〇〇、金額〇〇円、納品日◯/◯)につき、◯/◯(◯)15:00までに全額をお支払いください。
期日までに入金がない場合、支払督促・少額訴訟等の法的手続へ移行し、遅延損害金(年3%または契約利率)および費用も併せて請求します。
4. それでもダメなら、裁判所へ
- 支払督促:書面審査のみ・手数料は訴訟の半額。相手が異議を出さなければ仮執行宣言→強制執行へ。
- 少額訴訟(60万円以下):原則1回期日で判決のスピード解決。
- 民事調停:関係を壊したくないなら、第三者が入る話合い解決。
弁護士を活用するメリット

違反の言語化と交渉材料づくり
事実関係を下請法やフリーランス法に当てはめ、「どこが法令違反に当たるのか」を明確に整理します。
相手にとっては耳の痛い指摘かもしれませんが、きちんと法的根拠を示すことで、社内稟議を通しやすくなります。行政窓口への相談や申告も視野に入れた戦略を立てることで、話し合いの土台が整います。
最短ルートの即時選択
支払督促、少額訴訟、通常訴訟、仮差押えなど、状況に応じて最適な手段を選びます。
「このまま待っていても進展しない」という不安を取り除き、必要な証拠をそろえながら、プロの判断でスピーディーに進めます。
“揉めない”和解条項の設計
分割払いの条件、期限の利益喪失、担保、違約金、遅延損害金、秘密保持まで、将来のトラブルを防ぐ合意書を作成します。
「もう二度と同じ思いをしたくない」というお気持ちを形にし、安心して次の仕事に進めるようにします。
再発防止の仕組みづくり
契約書の見直しや運用ルールの整備を行い、未払いが起こりにくい体制を作ります。
検収の定義や支払期日の明確化、遅延利息の設定、前金や中間金の導入、電子記録債権の活用など、日常の取引に自然に組み込める方法をご提案します。
精神的負担の軽減
相手とのやり取りや催促は、時間だけでなく気力も消耗します。弁護士が間に入ることで、直接交渉のストレスから解放され、「法的な部分は任せられる」という安心感が得られます。
精神的な余裕が生まれることで、本来の仕事や生活に集中できるようになります。
まとめ
証拠の一本化 → 期限付き一次催告 → 内容証明 → 裁判所の簡易手続が基本動線。対象取引によっては下請法やフリーランス法が追い風になります。早期に弁護士を入れることで、回収の実効性と再発防止設計が大きく前進します。
髙瀬総合法律事務所は、これまで顧問企業数百社以上の対応実績があり、事業者の事情や業界特有の課題に精通しています。複雑な契約関係や取引慣行にも強く、あなたの事業を守るための最適な解決策をご提案します。
私たちがあなたの力になります、ぜひ一度ご相談ください。