株式交渉を活用し死亡した社長の退職金支払いを実現した事例
- 2025.03.19
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Case type
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Lowyer
history of the problem 問題の経緯
事業承継において、株式の持ち分は経営の主導権を握る重要な要素です。
今回の事例では、社長が急逝した後、その遺族が会社に対して退職金の支払いを請求しましたが、役員の退職金は株主総会での決議が必要であり、会社側は過半数の株式を保有していたため、支払いを拒否することが可能な状況でした。
一方で、遺族は社長から相続した株式37%の拒否権を持っており、会社との交渉材料として活用できる立場にありました。
本事例では、この株式を交渉の軸とすることで、死亡した社長の退職金支払いを実現したプロセスについて解説していきます。
history of the problem クライアントの争点・希望点
争点・希望点
- 社長の退職金を受け取ること。
- 株式を売却する場合、できるだけ有利な条件で売却したい。
Consequences of this issue. この問題の結果
交渉を通じて最終的に退職金の支払いと株式の売却が実現
社長が急逝し、遺族が社長の退職金を受け取る権利を主張しましたが、株主総会で過半数の賛成を得る必要があるため、会社側が退職金の支払いを拒否しました。
一方で、遺族側は37%の株式を保有しており、会社の重要事項に対する拒否権を持っていました。この状況を活用し、交渉を通じて最終的に退職金の支払いと株式の売却が合意されました。
history of the problem 弁護士ポイント解説
会社は誰のもの?が分かる! 会社法のキホン
会社=株式です。
会社は、一人の人が全部のお金を出して作ることもできますが、多くの人がお金を出し合って作ることもできます。

この「お金を出し合って作る会社」を 株式会社 といいます。
お金を出してくれた人たちは、「株主」と呼ばれます。会社は、この人たちから集めたお金を使って仕事を進めていきます。そして、会社がもうけを出したら、その一部を株主に分けることもあります。
お金を出した証拠として「株(かぶ)」が発行されます。この「株」を持っている人は、会社の 持ち主の一人 ということになります。たくさんの株を持っている人ほど、会社の経営について意見を言う力(決定権)が大きくなります。
つまり、株式会社とは「株を持つ人(株主)たちのもの」 であり、会社=株式とも言えます。会社がうまくいけば、株の価値が上がって、持っている人も得をしますし、逆に会社がうまくいかないと株の価値も下がってしまいます。
株式と経営権の関係
会社の重要事項は株式の保有割合によって決まります。

- 株式の保有割合2/3以上(66.7%): 定款の変更、増資、M&A などの重要決定が可能。
- 株式の保有割合1/2超え(50%超・過半数): 取締役の選任・解任、役員報酬の決定が可能。
- 株式の保有割合1/3(33.3%以上): これを持っていると、拒否権が発動できるため、重要事項を阻止することが可能。
- 今回の場合、遺族側が37%の株式を持っていたため、会社側にとっては経営の自由度が制限されるリスクがありました。
退職金支払いの決定権
役員の退職金の支払いには、株主総会での過半数の承認が必要とされています。そのため、会社側は過半数の株式を保有していたことから、退職金の支払いを否決する権限を持っていました。
一方で、遺族側は退職金を受け取る権利を有していましたが、支払いが拒否された場合に備えて、相続した株式を交渉材料として活用できる立場にありました。
株式買取の仕組み
会社は、株主から強制的に株を買い取ることはできません。
株式は財産と同じであるために強制的に取り上げることが出来ないのです。
しかし、定款(会社のルール)に「株主が亡くなった場合、会社が株を買取できる」と記載しておくことで、株式の買取が可能となります。今回のケースでは、そのような定款の規定がなかったため、会社側は株式を取得するために遺族との交渉を余儀なくされました。
交渉の結果
遺族は退職金を確保するために会社との交渉を進め、会社側は経営の安定のために株式を取得する必要がありました。最終的には、会社は遺族に退職金を支払い、その対価として遺族は株式を売却することで合意しました。
結論

株式の保有割合は経営権や退職金の受け取りに大きな影響を及ぼします。特に、事業承継時には遺族と会社側の利害が対立することがあり、交渉が難航するケースも少なくありません。そのため、適切な事前対策として、弁護士と連携しながら事業承継の計画を立て、定款の整備や株式の持ち分調整を行うことが重要です。
事業承継と株式交渉で円滑な解決を目指すなら弁護士に相談を
事業承継や株式の買取交渉は、法律と経営戦略が密接に関わるため、慎重な対応が求められます。今回の事例のように、退職金や株式売却を巡る対立は珍しくなく、適切な法的知識がなければ不利な条件を受け入れざるを得ない可能性があります。弁護士に相談することで、交渉を有利に進める戦略を立て、双方にとって納得のいく解決を目指せます。事業承継の問題は早めに専門家のアドバイスを受けることが重要です。
この事例では、株式の持ち分が経営の主導権に大きく影響し、事前に定款で株式買取のルールを定めていなかったため、交渉が必要になり、時間とコストがかかる事態になったことが教訓となりました。
事業承継をスムーズに進めるためには、後継者に十分な株式を相続させる準備や、定款の整備が不可欠です。
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この事件を担当した弁護士

高瀬 芳明代表弁護士
Yoshiaki Takase

経営者目線で白か黒ではなく「許容範囲内でのリスク承知でリターンを取れるような最適な課題解決策」のご提示を心がけています。