契約不適合で未払いが発生、弁護士の介入で報酬の一部回収を果たした事例
- 2024.11.20
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Case type
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Lowyer
history of the problem 問題の経緯
相談時の 状況
- 業種
- ソフトウェア開発業
- 従業員数
- 30名
- 問題当事者
- 受託者
- 相談者
- 代表者
ソフトウェア開発業者が業務委託として受注した案件では、明確な契約書や見積書が交わされないまま作業が進行しました。委託元との間で具体的な仕様についても十分な合意が得られず、開発が進んだ結果、納品後に委託元は成果物が期待した仕様を満たしていないと主張し、支払いを拒否しました。
受託者は納品物が合意された内容に基づいていると主張し、未払いの報酬を求めて弁護士に相談し、法的措置を検討することになりました。
history of the problem クライアントの争点・希望点
争点
成果物が契約の仕様に適合しているかどうか、そして、未払いの報酬をどのようにして回収するか。
クライアントの 納品された成果物に対して正当な報酬を受け取ること。
Consequences of this issue. この問題の結果
契約書がない不利な状況でも報酬の一部回収に成功
契約書や見積書が交わされていなかったため、請求自体が非常に難しい状況にありましたが、弁護士は納品物の作業内容や業界の標準的な価格を証拠として提出するなど、法的に適切な主張を展開しました。裁判では、成果物の品質や契約内容の曖昧さが問題となり、相手側は納品物に欠陥があると主張しましたが、弁護士はこれに反論し、納品物が一定の基準を満たしていることを示しました。
その結果、請求額の全額は認められませんでしたが、弁護士の介入により一部の報酬回収が実現しました。契約書がない不利な状況にもかかわらず、法的根拠をもとに報酬の一部を回収できた点は、今後の契約管理の重要性を再確認する機会となりました。
history of the problem 弁護士ポイント解説
見積書や契約書の重要性
この事例では、事前に明確な見積書や契約書を交わしていなかったため、紛争が発生しました。契約内容を明確にしておくことが、後のトラブルを避けるために非常に重要です。
なお、契約書は以下のような項目が特に今回のようなトラブル回避のためには重要な要項となってきます。
契約書内の重要な要項
契約書に必須の要項 | 解説 |
---|---|
契約の目的 | 契約の目的や対象となる業務・成果物の内容を明確に記載します。これにより、双方の認識のズレを防ぐことができます。 |
業務範囲・仕様 | 業務の具体的な範囲や成果物の仕様を詳細に定めます。これが曖昧だと後でトラブルの原因となるため、可能な限り詳細に記載することが重要です。 |
報酬・支払い条件 | 報酬額や支払いのタイミング、方法を明確に規定します。部分的な納品の場合の支払い方法や、成果物の受領後に支払いが行われる条件なども記載しておくとよいです。 |
納期・スケジュール | 納期や作業スケジュールを具体的に設定し、遅延が発生した場合の対応(違約金など)についても定めておくことが大切です。 |
契約不適合責任 | 成果物が契約に合致しない場合の対応を明確にします。修正や再納品の義務、報酬減額、契約解除など、問題が発生した際の対応を規定することが重要です。 |
秘密保持義務 | 契約期間中および終了後における、秘密情報の取り扱いに関する規定を設けます。これにより、機密情報の漏洩を防止します。 |
契約の解除条件 | 契約の解除ができる条件や手続きについて定めます。例えば、相手方の重大な契約違反や納期遅延が発生した場合に契約を解除できるかなどを明示します。 |
紛争解決条項 | 万が一トラブルが発生した場合の解決方法について規定します。裁判による解決、仲裁、または特定の管轄裁判所を明示しておくとスムーズです。 |
報酬回収の現実
本件の様に契約書や見積書などが元々ない場合などの実際の裁判では、請求した金額の全額が認められることは少なく、特に契約内容に不備がある場合は、報酬回収が難しくなります。このため、契約の段階で金額や条件をしっかりと定めておくことが重要です。
契約書のない受発注進行に関する注意喚起
当弁護士事務所では、契約書を交わさずに業務を進めた結果、トラブルに発展するケースについて多くのご相談をいただいています。契約書がないまま業務を進行することは非常にリスクが高く、特に成果物やサービスの提供に関して問題が生じた際、契約書が存在しないことで、以下のような深刻な問題が発生しやすくなります。
1.双方の認識のズレが大きくなる
契約書がない場合、業務の範囲や成果物の仕様に対する認識が双方で食い違うことがあります。この認識のズレが、後の報酬未払い、納品後のトラブル、クレームの原因となります。
2.報酬回収が困難
契約書や見積書がないと、報酬を請求する根拠が弱くなります。裁判になった場合でも、合意内容を証明することが難しくなり、最悪の場合、請求した報酬が全額認められないこともあります。
3.契約不適合責任の争点が複雑化する
納品物が契約に適合しているかどうかを巡る争いが発生した際、契約書がないと、どの仕様に基づいて作業が行われたかを証明することが困難です。結果として、成果物が期待通りでないと主張された場合、業者は反論できず、不利な状況に陥ることになります。
4.トラブルが発生した場合の対応が不明確
契約書には、納品物に問題があった場合の対応や、紛争解決方法についての条項が含まれるべきです。これがないと、万が一トラブルが発生した際、解決方法が不明確になり、問題解決までの時間が長引くことがあります。
この事件を担当した弁護士
高瀬 芳明代表弁護士
Yoshiaki Takase
経営者目線で白か黒ではなく「許容範囲内でのリスク承知でリターンを取れるような最適な課題解決策」のご提示を心がけています。