企業法務コラム

2025.05.27

契約書の“第○条”しか読まれていない?本当に見るべき3つの条項

契約書の“第○条”しか読まれていない?本当に見るべき3つの条項

実務で揉めやすい「解除条件」「損害賠償」「反社条項」に注目

契約書は「全体を読む」ことが基本

契約書のレビューを依頼されると、「この第○条だけ見てほしい」と言われることがあります。特に取引条件や金額、納期など“目立つ条文”に関心が集まりやすい傾向があります。しかし、企業法務の現場では、契約トラブルが発生するポイントは決してそのような主要条項だけとは限りません。

契約書は法律上の拘束力を持つ文書であり、一度締結してしまえば、想定外のトラブルにも“契約通り”に対応しなければならなくなります。だからこそ、「弁護士」が重要視する条項にこそ、注意を向けるべきです。

本記事では、実務で揉めやすく、かつ見落とされがちな3つの「条項」について、弁護士の視点から解説します。

1. 解除条件条項 ― 「やめたくてもやめられない」契約の落とし穴

1. 解除条件条項 ― 「やめたくてもやめられない」契約の落とし穴

契約書には、契約を終了させるためのルールとして「契約解除条項」や「解除条件条項」が設けられていることが一般的です。しかし、その内容によっては、不利な取引関係から抜け出すことが非常に難しくなることがあります。

契約解除条項とは?

当事者の一方または双方が、一定の事由が生じた場合に、契約を一方的に解消できる権利を定める条項です。契約解除の意思を相手に通知し、その通知が相手方に到達した時点で契約は遡って(過去にさかのぼって)無効となります。これにより、すでに行われた給付については原状回復義務(返金や返却など)が発生します。

たとえば、次のようなケースがあります。

  • 支払いや納品の遅延など、相手方の債務不履行があった場合
  • 一方の当事者に破産手続きが開始された場合
  • 一定期間前の予告期間を設けた上での、当事者双方または一方からの解約

解除条件条項とは?

ある不確実な事実が発生した場合に、自動的に契約の効力が失われる条項です。契約解除条項と異なり、当事者の意思表示を必要とせず、条件の成就により契約は将来に向かって終了します(遡及効はなし)。履行済みの内容については、別途取扱いを定める必要があります。

たとえば、次のようなケースがあります。

  • 融資が承認されなかった場合に、売買契約が無条件に解除される
  • 採用候補者が特定の資格試験に合格しなかった場合、内定が自動的に失効する

契約解除条項と解除条件条項のまとめ

項目契約解除条項解除条件条項
契約の終了方法当事者の意思表示で契約を終了一定の条件が成立すると自動的に契約が終了
契約の消滅時点通知が相手に到達した時点で遡及的(過去にさかのぼって)消滅条件が成立した時点で将来に向かって消滅
効果原則として原状回復(契約前の状態に戻す)原則として原状回復なし(履行済みは有効)
・支払い遅延が続いた場合に解除通知を出す
・通知すれば1ヶ月後に契約終了できる
・融資が通らなかった場合は売買契約が無効になる
・資格試験に落ちたら内定が自動失効する

注意点

以下のような契約内容は、実務上トラブルを招く可能性があります。

  • 契約の解除には相手方の重大な違反が必要で、軽微な問題では解除できない
  • 契約が自動更新されるにもかかわらず、更新停止の通知期限が非常に早く設定されている
  • 一度契約したら、途中でやめる手段が極めて限定されている

このような条項に気づかずサインしてしまうと、不利益な契約関係を長期間維持せざるを得なくなる恐れがあります。

契約書を交わす前には、解除に関する条項も含め、弁護士によるリーガルチェックを受けることを強くおすすめします。

2. 損害賠償条項 ― 損害の範囲と上限は明確か?

2. 損害賠償条項 ― 損害の範囲と上限は明確か?

損害賠償条項は、契約違反があった際にどの範囲まで損害を請求できるのか、あるいは請求される可能性があるのかを定める重要な条項です。

典型的な注意点は次の通りです。

  • 損害の定義が広く、逸失利益など間接損害まで含まれている
  • 損害賠償の上限(例えば契約金額の何倍まで)が設定されていない
  • 責任を全面的に一方当事者に負わせる内容になっている

企業間契約では、どちらがどこまでリスクを負担するかを明確にすることが重要です。こうした点を見逃すと、万が一トラブルが起きた際に想定外の金銭的負担が発生しかねません。

3. 反社会的勢力排除条項 ― 入っていないと契約が無効になることも

3. 反社会的勢力排除条項 ― 入っていないと契約が無効になることも

「反社会的勢力に関与していないことを相互に確認する」ための条項は、企業法務の世界ではもはや“常識”です。近年では反社条項の有無が契約の信用性を左右することもあり、上場企業や金融機関との取引では必須とされています。

注意すべきポイントは次のような内容です。

  • 反社該当時の契約解除条項がない
  • 自社だけに過度な対応義務が課せられている
  • 定義が曖昧で、適用範囲が広すぎる

反社条項がない契約書は、コンプライアンス上のリスクをはらんでおり、取引先との信頼にも影響を与えかねません。

弁護士に相談することが「契約リスクの最小化」に直結する

弁護士に相談することが「契約リスクの最小化」に直結する

契約書を「自社に都合よく書く」ことが目的ではありません。大切なのは、リスクを把握し、必要な部分で交渉し、万が一の時に備えておくことです。そのためには、契約法務に精通した「弁護士」の視点が不可欠です。

特に、今回紹介したような「解除条件」「損害賠償」「反社条項」は、契約トラブルの現場で非常に多く見られる争点であり、後から修正や交渉をするのは困難です。

「とりあえず締結」ではなく、「リスクを見据えた契約」を。
そしてその一歩として、ぜひ私たち髙瀬総合法律事務所の弁護士に契約書を拝見せてください。
契約の“見えない地雷”を避けることが、ビジネスの安定につながります。

契約書に不安がある方は、まずはご相談ください

契約書に不安がある方は、まずはご相談ください

契約書の条項は、些細な文言の違いが大きなリスクに直結することがあります。特に「解除条件」「損害賠償」「反社条項」などの見落としは、後に深刻なトラブルを招きかねません。

髙瀬総合法律事務所では、契約書の作成・レビューから、企業間契約におけるリスク管理まで、経験豊富な弁護士が丁寧に対応いたします。

私たち髙瀬総合法律事務所は事務所は新宿の他、神奈川では相模原・新横浜エリアの企業様からのご相談にも対応可能です。
オンラインでのご相談も承っておりますので、遠方の方もお気軽にご利用いただけます。

「契約書、これで大丈夫?」と感じたら、まずは一度、髙瀬総合法律事務所までご相談ください。
初回のご相談から、企業の実情に合わせた具体的なアドバイスをご提供いたします。

📞 ご相談面談予約・お問い合わせは以下リンクより受け付けております。

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