企業法務コラム

2024.04.23

IPO準備における法律チェックリスト

IPO準備における法律チェックリスト

2023年の国内IPO企業数は96社で、2022年と比べると微増という結果になりました。
そのうち6割がスタートアップ企業でインパクト企業によるIPO(インパクトIPO : 単に利益を追求するだけでなく、社会的環境的な課題の解決に取り組むビジネス企業が、資金調達目的のためにするIPO)も複数見られました。インパクトIPOやインパクト企業への投資(インパクト投資)はグローバルな流れであり、今後も増えていくのではないかと予想しています。

しかし、IPOは法的にもハードルが高く一筋縄ではいきません。
このコラムでは法的な難題をどう乗り越えるかという、チェックリストをご紹介します。

経営者が直面する課題とは?

コンプライアンスの遵守

コンプライアンスの遵守

IPOにおけるコンプライアンスとは、単に”法律・条令を守る事”ではありません。企業倫理や社会規範という大きなものから社内管理規定などの細かいものまでが対象となります。 また、証券取引所のルールや金融商品取引法など、厳格な規制を理解し遵守する必要があります。反社会的勢力との関係がないのは当然として、会社の経営活動や意思決定に間接的にも関与していない事を示す必要があります。

内部統制システムの構築

内部統制の整備はIPOにおいて必要不可欠な要素です。
上場審査の項目であり、上場後は報告書提出の義務があります。業務の有効性と効率性を高める事業活動における法令順守の徹底を図る信頼性のある財務報告書を作成する資産の保全、という4つの目的があります。
このシステムの構築は、まるで巨大なパズルを作りあげるかのような注意力と根気が求められます。

内部統制システムの構築

財務報告の整備

財務報告の整備

IPO準備会社は、「益金」「損金」から「所得」を計算する税務会計ではなく、「収益」「費用又は損失」から「利益」を計算する財務会計へと変更した財務諸表の作成と監査がが求められます。これは、3年かかるBIGプロジェクトで、あるクライアントは、「この一歩が、最も高い壁だった」と振り返ります。

財務諸表の整備と監査を通じて、企業は自身の経済的健全性と成長の可能性を示し、市場からの信頼を獲得するのです。

資金調達と資本構成の最適化

IPO準備会社の資金調達と資本構成の最適化とは、株式や社債の発行などを通じて必要な運転資金や拡大資金を確保し、同時に負債と自己資本のバランスを適切に保つことを指します。資本政策は一旦実施されると株主に主導権が移るため、企業のリスク耐性と成長戦略に合わせて慎重に計画される必要があります。

資金調達と資本構成の最適化

経営戦略の見直し

経営戦略の見直し

IPOを成功に導くためには、企業の将来像を描き、それを実現する戦略を練る必要があります。この過程は、まるで大海原を渡る航海図を作成するようなものです。どの星(目標)に向かうか、、その選択が企業の運命を左右します。市場分析や競合分析を基に、企業が将来的にどのような成長を目指すかを明確にし、実現に向けて具体的なアクションプランを策定します。

人材の確保と組織体制の強化

IPOは10年に渡るビッグプロジェクトとなることも少なくありません。
適切な人材を確保し、上場企業としての組織運営に適応できるようにすることが必要です。IPOのフェーズによっても必要となる人材は変わります。最適なチームを構築し、組織を強化することは、企業の将来にとって不可欠です。また、優秀な人材の確保をIPOの目的として挙げている企業も多く、人手不足が続くと予想される日本経済においてIPO後は社名が広く知れわたることにより更に優秀な人材が確保できる確率を高めることができます。

人材の確保と組織体制の強化

市場のタイミング

市場のタイミング

市場環境は常に変動しており、IPOに最適なタイミングを見極めることは困難です。 市場のタイミングと経済や業界のトレンドを常に分析し、専門家の助言を得ながら柔軟な戦略を持つことが必要です。IPOは多くの年数を要するプロジェクトになるので東証一部、マザーズ等各マーケットで定めている上場基準のクリアを念頭に、市場の波に合わせた上場計画を立てていくことで、適切なタイミングで行動に移せます。

まとめ

いかがでしょうか?
IPOのプロセスは複雑であり、多くの法的な落とし穴が存在し専門的な法的支援は不可欠です。
IPOを熟知した弁護士と連携し、万全の準備を整えることが、スムーズなIPOへの鍵となります。弁護士・会計士・税理士など専門家の手助けのもと、企業はこれらの障壁を乗り越え新しいステージを迎えるのです。

弁護士法人高瀬総合法律事務所
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