2025.09.11
契約書に書かれた「遠い裁判所」…本当に行かなきゃいけないの?

契約書を読むと、「本契約に関する紛争は○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」という文言を見かけることがあります。
ところが、その○○地方裁判所が自分の住んでいる地域から何時間も離れた場所にあることも…。
こうなると、
「もしトラブルになったら、わざわざそこまで行かなきゃ不利になるの?」
「相手が有利になるようにわざと遠くしているんじゃないの?」
「これって変えられないの?」
といった疑問を抱く方も多いでしょう。
そこで今回は、契約書に書いてある遠方の裁判所に対しての疑問について弁護士目線で解説します。
行かなければ不利になるのか?

契約書で合意した裁判所(合意管轄)は、原則として有効です。
裁判を起こされた場合、そこが指定されていれば、その裁判所で審理されることになります。
実際に裁判が始まると、期日に出席しないと欠席判決が出る可能性があるため、放置は非常に危険です。
ただし、現在はオンラインでの期日や書面提出で対応できる場面も増えており、必ずしも毎回現地に行く必要はありません。もっとも、証人尋問や本人尋問など重要な期日には出廷が必要になることが多い点には注意が必要です。
遠方の裁判所を指定することは公正なのか?

企業間取引や消費者契約では、この条項はしばしば使われます。
企業が自社所在地の裁判所を指定するのは、移動や手続きの負担を減らすためという理由もあります。
しかし、特に消費者契約の場合は、消費者保護法や民事訴訟法によって「相手方の住所地の裁判所でも起こせる」とされているケースがあります。
つまり、一方的に消費者に不利な合意は無効となる可能性があるのです。
契約書に書かれた裁判所の場所を変えられないのか?

契約交渉の段階で「管轄裁判所を双方の所在地から選べるようにしましょう」などと提案すれば、変更できる可能性はあります。
特に業務委託契約や取引基本契約などでは、合意管轄を双方の所在地または東京地裁など交通の便が良い裁判所にする例もあります。
すでに契約してしまった後でも、相手との合意で契約書を変更できますし、消費者契約であれば法律上の保護が働く場合もあります。
弁護士からのアドバイス

- 契約段階で「管轄裁判所」の条項は軽視せず、必ず確認しましょう。
- 消費者契約では不利な合意は無効となる場合があります。
- 企業間契約でも、移動コストや負担を考えて交渉の余地があります。
- 紛争発生時は「遠いから無理」と諦めず、まず弁護士に相談することで出廷回数や対応方法を最小限に抑える戦略を立てられます。
まとめ
裁判所が遠くても「必ず毎回行かないと不利」になるわけではありませんし、契約によっては無効や変更の可能性もあります。
近年では、Web会議システムを利用したオンライン調停・オンライン裁判の活用が進んでおり、移動せずに手続を進められるケースも増えています。
大事なのは、トラブルが起きたときにすぐに法的な対応方針を立てることです。
契約書の内容に不安がある時は、一人で悩まずにまずは弁護士にご相談ください。