2025.12.10
AIを使うのが当たり前の時代、契約書は従来のままで大丈夫?(AI追加条項チェックリストつき)

「AI条項」を入れるべき理由
AIツールを活用しながら業務を行う企業や個人が急増しています。生成AIは非常に便利で、文章・画像・コード作成などの生産性を大きく引き上げる一方、「AIを業務で使うこと」を前提にした契約書整備は、まだ十分に進んでいないのが現状です。
実際、委託業務や制作業務の場面で、
「AIを使って作業した成果物に責任はどうなる?」
「AIが間違った情報や著作物を混入していたら?」
「機密情報をAIに入力してしまった場合は?」
といったトラブルの芽は、すでに現場で多く見られます。
弁護士として契約書をチェックしていると、AIを使う前提の条項が全くない古い契約書 のまま運用されているケースが以下のようなリスクを生んでいます。
今回はAI追加条項チェックリストもありますのでぜひ最後までお読みください!
1. AI生成物の著作権リスクが残ったままになっている

AIが作った文章・画像・ソースコードには、
- 著作権が発生しないものが含まれる
- AIが学習した著作物に類似してしまう可能性がある
という法律上の不確定要素があります。
にもかかわらず、従来の契約書だと成果物の著作権は納品時に移転するとだけ書かれているため、
AI生成物に対する権利の扱いが空白のまま になってしまいます。
2. AIによるミスや誤情報の混入に関する責任が不明確

AIは便利ですが、
- 事実と異なる内容を勝手に生成する
- 引用元不明の情報を出力する
など、“精度100%”ではありません。
それでも、納品された側は
「プロに依頼したのだから当然正しい内容だろう」
と期待します。
もし誤った情報が顧客サイトや資料にそのまま掲載され、損害が発生した場合、
AIによるミスなのか、作業者のミスなのかが曖昧なまま
責任追及される可能性があります。
3. 機密情報のAI入力による情報漏洩リスク

ChatGPT等の外部AIサービスを使う場合、
企業秘密や個人情報を入力すれば、
情報の扱いを誤れば漏洩につながる可能性があります。
従来の契約書では
「業務遂行に当たり秘密情報を保持すること」
という一般的な秘密保持条項しかなく、
AIサービス利用による情報の扱いは規定されていません。
結果として、
- 外部AIに入力する範囲
- 禁止される利用方法
- 社内AI利用ルールの整備
などが空白になり、リスク管理が不十分です。
4. AI利用の透明性が担保されない

依頼者側からすると、
「人が作業したと思っていたが、実はAI任せだった」
というケースもあります。
特にシステム開発・デザイン・ライティングなどの業務は、
AI利用と人の専門性の境界が非常に曖昧です。
そのため契約書で
- AI利用の可否
- 利用する場合の範囲
- 納品物にAI生成物が含まれるかどうかの明記
を定めていないと、後から“認識のズレによる紛争”を招きます。
どんな「AI条項」を契約書に入れるべき?
AI追加条項チェックリスト

ここからは弁護士の立場として、実務上よく提案するポイントです。
契約書に AI 関連のリスクが漏れていないかを確認するためのチェックリストです。
制作・開発・ライティング・コンサル業務すべてに使えます。
1.AI利用の透明性
- 業務中に AI を利用する場合、事前通知義務があること
- AIを利用してよい業務範囲が明確化
- 完全自動生成を禁止し、専門家の検証を必須とする
2. AI入力情報の管理
- 機密情報・個人情報を外部AIに入力しない義務を定める
- 特定のAI(社内専用AIなど)を例外的に許可するルールがある
- 情報漏洩が起きた場合の責任範囲が決める
3. AI生成物の権利関係
- AI生成物を成果物として納品できるかどうかを明記
- AI生成物に著作権が発生しない可能性がある点の扱い
- 第三者権利侵害リスク(画像・コード・文章の近似)への責任分担
4. AI生成物の品質保証(検収)
- AI生成のコードを人が検証する義務
- AI生成物の誤りについて責任をどこまで負うか(制限するか)
- 納品物にAI生成部分が含まれる場合の表示義務
5. AI利用に関する責任分担
- AI特有の不確実性(誤情報・バグ)に対する責任の範囲を定めている
- 依頼者側でAIを利用した場合の責任範囲
- 不可抗力扱いとするリスク・制限条項の設置
6. 契約不適合・損害賠償リスクの調整
- AI生成物の前提を踏まえた「責任制限条項」がある
- 賠償上限(例:委託料の総額を上限とする)が設定されている
- 紛争が起きた場合の協議プロセスを明確化
7.AI禁止または制限が必要なケースの明記
- クライアントの機密情報・戦略情報を使う業務でのAI利用禁止
- 公共性の高い文書・広告文など誤情報が致命的な業務でのAI使用制限
- 法的リスクの高い分野(医療、法律、金融)の出力に対する慎重義務
まとめ 。 今の契約書は「AI前提」に進化させるべき

AI活用は、生産性を高める一方で従来の契約書では想定していなかった新しい法律リスクを生み出しています。
そのため今後は、
- AIを使って作業する側
- AIを使うサービスを依頼する側
どちらにとっても、契約書をAI前提仕様にアップデートすることが欠かせません。
実務では、
「単にAI利用禁止にする」のではなく、AI活用を前提に、トラブルが起きない設計にすることが重要です。
AI条項のある契約書の見直しは弁護士にお任せください。
当事務所では、
- AI時代の契約書チェック
- AI利用規程の作成
- AI生成物の権利関係・責任範囲の整理
- 実際の紛争リスクに基づいた実務対応
を行っています。
「AIを使った業務が増えてきたが、契約書はそのまま…」
「万が一トラブルがあった時に責任がどこまでなのか不安」
という場合は、早めにご相談ください。
企業法務に精通した弁護士チームが御社に寄り添い、AIでは再現や作成しきれない契約書のサポートが可能です。海外展開を見据えた契約書や、著作権(IP)、技術契約などの複雑な契約書にも対応しております。
ぜひ一度ご相談下さい。






