2026.01.27
AI生成物の「事後差止めリスク」と企業が取るべき対応

海外AI規制の動きにどう備えるか
AI画像・動画生成技術の進化により、誰でもクリエイティブな作品を生み出せる時代になりました。
しかし近年、AIが生成したコンテンツが事後的に「著作権侵害」と判断され、削除・使用停止を命じられる事例が海外で増えています。
本記事では、海外で進む「事後差止め」の動向と、日本企業が今から取るべき対策について、弁護士の視点から解説します。
1. 海外で進む「事後差止め」の法整備

EUのAI Actとオプトアウト制度
EUでは2024年に制定された「AI Act(人工知能規則)」により、AI開発者や提供者に学習データの透明性義務が課されています。
さらに、著作権指令(Directive 2019/790/EU)では、権利者が自分の著作物をAI学習から除外する「オプトアウト権」を持つことが明記されています。
これにより、AIが無断で学習した著作物をもとに生成した画像や動画が公開された場合、
権利者が後から削除・差止めを求める法的手段が整備されつつあります。
米国でも訴訟が進行中
米国では「Fair Use(公正利用)」の範囲が争点となっており、
現在も大手AI企業を相手にした著作権侵害訴訟(例:Thomson Reuters v. Ross Intelligence, Getty Images v. Stability AI)が進行中です。
判例次第では、AI生成物が著作権侵害として差止め対象になる可能性もあります。
2. 日本の現状はAI学習は合法だがリスクは残る

日本では、著作権法第30条の4(情報解析のための複製)により、
著作物をAI学習に利用すること自体は合法とされています。
しかし、次のような課題があります。
- 学習拒否(オプトアウト)制度が存在しない
- 生成物が他人の著作物に酷似しても、削除・差止めを求める明確な制度がない
- AIが海外著作物を学習していた場合、海外法の適用を受けるリスクがある
つまり、「日本では合法でも、海外では違法とされる」状況が起こり得るのです。
3. 差止め請求を受けた場合のリスク

AI生成コンテンツが海外権利者からの警告・削除請求の対象となった場合、
企業は次のような不利益を被るおそれがあります。
- 広告動画やSNS投稿の削除・配信停止
- ブランド信用の毀損や取引先からの契約解除
- 損害賠償請求や訴訟コストの発生
特に、生成AIを用いた広告・キャンペーン・プロモーション制作では、
一度の指摘で多方面への影響が生じる点に注意が必要です。
4. 企業が今すぐ取るべき3つの対策

① AIサービスの学習ポリシーを確認する
利用しているAIツールがどのようなデータを学習しているのか、
利用規約や透明性報告を確認しましょう。
「商用利用可」とされていても、学習元が不明確なAIはリスクが高いといえます。
② 生成履歴・プロンプトを記録する
生成日時、使用AI、入力したプロンプトなどを社内で記録しておくことで、
将来的に「自社で創作した証拠」として利用できます。
③ 契約書・規約で責任分担を明確にする
制作会社や外部クリエイターに依頼する場合、
AI生成物の使用範囲・責任の所在・再利用制限などを契約書で明確化しておくことが大切です。
弁護士から皆様へ

AI動画生成技術は、企業の創造力を広げる一方で、法的責任の範囲を不明確にする要因でもあります。
「AIが作ったものだから安全」とは限りません。
実際には、
- 著作権侵害に問われるリスク
- 意匠登録の新規性喪失
- 海外の差止め命令によるビジネス影響
など、現場で即発生し得る問題が存在します。
AIを安全に活用するためには、
法的リスクを理解した上での運用設計と、事前の弁護士相談が不可欠です。
まとめ。AIを安全に使うために

AIはビジネスを加速させる力を持つ一方で、正しい法的理解がなければ逆に足かせにもなります。
特に海外で導入が進む「事後差止め」制度は、今後日本企業にも直接影響を与える可能性があります。
もし次のような不安があれば、今のうちにご相談ください。
- 自社のAI生成コンテンツが著作権侵害にあたらないか確認したい
- 広告や販促物でAI画像を使ってよいか知りたい
- 海外展開時のAI利用リスクを把握したい
AI画像・動画生成に関する法的リスクのご相談はこちら
当事務所では、AI生成コンテンツに関する著作権・意匠・不正競争防止法などのご相談を受け付けています。
SNS拡散・広告利用・海外展開など、具体的な利用シーンに応じてリスクを評価し、最適な対応方針をご提案いたします。






